はじめに
見送る前にやっておきたいと思ったことを、私は思いつくままにリストにしてみた。うちの猫が高齢と呼ばれる年齢に差しかかった頃から、「今のうちにできることは何だろう」と考える時間が増えていった。まだ差し迫った状況ではないのに、頭のどこかでその子と過ごせる時間には限りがあるのだと意識するようになっていた。
きっかけは何か一つの大きな出来事があったわけではない。むしろ、日々の暮らしの中で少しずつ積み重なっていった感覚に近い。以前より眠っている時間が長くなった、高い場所への上り下りをためらう瞬間が増えた。そういう小さな変化を目にするたびに、「今のうちに何かしておいた方がいいのではないか」という気持ちが、じわじわと大きくなっていった。
このリストは、何かの正解や手引きではない。私が実際に確認したこと、確認しておけばよかったと思うことを、そのまま並べたものだ。もし今、同じように高齢の猫と暮らしていて、何から手をつければいいのか分からずにいるなら、参考の一つとして眺めてもらえたらと思う。焦って全部をこなす必要はないし、ここに書いたことがすべての人に当てはまるとも思っていない。あくまで、私という一人の経験として読んでもらえたらと思う。
私が実際に確認したこと
その子が高齢と呼ばれる年齢になってから、私はまず日々の様子をよく見るようになった。ご飯を食べる量、水を飲む量、寝ている場所や時間帯。それまではあまり意識していなかったことに、少しずつ目が向くようになっていった。以前は「元気そうだから大丈夫」という大まかな見方で済ませていたことが、高齢になってからは一つひとつを確かめるような見方に変わっていったように思う。
写真は、以前からよく撮っていたつもりだったけれど、高齢になってからは意識して増やした。特別な瞬間だけでなく、なんでもない日常の様子も残しておきたいと思うようになったからだ。ソファで丸まっている姿、窓際で日向ぼっこをしている姿。当時は何気なく撮っていた一枚一枚が、今の自分にとってはかけがえのないものになっている。
体重については、動物病院で測ってもらう機会にメモを残すようにしていたが、家で定期的に測る習慣までは作れなかった。今振り返ると、そこはもう少しやっておけばよかったと思う部分の一つだ。体重の変化は、日々見ているだけでは気づきにくいことがあるらしいと、あとになって知った。
過ごしやすい場所についても考えた。段差の上り下りが少し億劫そうに見える瞬間があり、よくいる場所の近くに新しい寝床を置いてみたりした。トイレの場所も、以前は部屋の奥にあったのを、なるべく近い場所に移してみた。こうした環境の見直しは、大きな決断というよりも、様子を見ながら少しずつ試していくような形で進めていった。
通院については、それまでかかっていた動物病院の連絡先や診療時間を、家族の誰でもすぐ確認できるようにメモにまとめておいた。これは実際にやっておいてよかったと思っていることの一つだ。何かあったときに、誰か一人しか連絡先を知らないという状態は、思っていた以上に心もとないものだと感じたからだった。
気持ちの面では、家族と少しずつ話す機会を持つようにした。まだ具体的に何かを決めるという段階ではなかったけれど、「もしものときはどうするか」ということを、漠然とでも一度は言葉にしておきたいと思ったからだ。個別に火葬をして手元に少し残しておきたいという方向で、家族の中では緩やかに一致していた。ただ、それ以上に踏み込んだ話し合いは、当時はまだできていなかった。話し合うこと自体に、どこか気が進まない部分もあったのだと思う。
今の私なら: 体重を家で測る習慣だけは、もう少し早く作っておくと思う。ただ、当時の自分にそこまでの余裕があったかどうかは、今でも分からない。
チェックリスト
ここからは、私が実際に確認したことや、確認しておけばよかったと思うことを、リストの形で整理していく。すべてを終える必要はない。気になる項目だけ見てもらっても構わない。
日々の暮らしの記録と観察
- 食事の量や好みの変化に気づいたときは、簡単でもメモを残しておく
- なんでもない日常の様子も含めて、写真や動画を残しておく
- 体重を測る機会があれば、その都度メモしておく(できれば家でも定期的に)
- 水を飲む量や場所、トイレの様子など、いつもと違う変化に目を向けておく
- 気になる変化があったときは、獣医師に相談する
環境と過ごし方の準備
- 段差の上り下りが負担にならないよう、よくいる場所の近くに休める場所を整えておく
- 通院の手段(連れて行く方法、かかる時間帯など)を確認しておく
- かかりつけの動物病院の連絡先や診療時間を、家族の誰でも分かる形でまとめておく
- 温度や湿度、日当たりなど、過ごす場所の環境を見直しておく
気持ちと家族の準備
- 「もしものとき」について、漠然とでも家族と話しておく
- お別れの形について、具体的でなくても一度は考えておく
- 一人で抱え込まず、家族の中で気持ちを共有できる時間を持っておく
すべて終えられなくても
ここまで並べてきたけれど、私自身、すべてを終えられたわけではない。体重を家で測る習慣は結局作れなかったし、お別れの形についても、漠然と話した程度で終わっていた項目がいくつもある。仕事や日々の用事に追われる中で、ここまで書いたことすべてに時間を割けたわけではなかった。
それでも、終えられなかったことがあるからといって、自分を責める必要はないと思う。できることには限りがあるし、その時々でできる範囲というものが確かにある。このリストは、全部にチェックがつくことを目指すためのものではなく、今の自分に何ができそうかを考えるきっかけとして使ってもらえたらと思う。一つでもできたことがあれば、それは十分意味のあることだったのではないかと、今の私は思っている。
人によっては、ここに挙げた項目以外にも、やっておきたいと思うことがあるかもしれない。逆に、状況によってはここまで手が回らないということもあると思う。どちらであっても、それぞれのやり方でその子と向き合っていることに変わりはないはずだ。
おわりに
見送る前にやっておきたいと思ったことを、こうして言葉にしてみることで、私自身、当時の自分がどこまで向き合えていたのかを改めて考える機会になった。できたこともあれば、できなかったこともある。どちらもそのまま、今の自分の中に残っている。
今も私は犬か猫のどちらかと暮らしていて、日々の小さな変化に目を向けながら過ごしている。あのときのリストを思い出すたびに、できたことの安心感と、できなかったことへの小さな引っかかりの両方を、同時に感じることがある。
もしこの記事を読んでいるあなたが、高齢の猫と今まさに暮らしているなら、このリストの一部だけでも、何かのきっかけになればと思う。急いで全部を終える必要はない。人によっては、様子を見ながら少しずつ進めていくやり方が合っていることもあるだろうし、早めに一つずつ確認していくやり方が合っている人もいると思う。どちらが正しいというものでもないと、私は感じている。
一人で抱え込まないために
ここに書いたのは、あくまで私自身の体験に基づく一つの記録であり、医学的な診断や治療法を示すものではありません。 もし当てはまるようであれば、無理をせずに、下記のような窓口にも相談してみてください。
- 動物の体調や医療的な疑問がある場合:かかりつけの獣医師、または地域の獣医師会
- 強い落ち込みや不眠が続く場合:公認心理師・臨床心理士などによる専門のカウンセリング機関
- 心身のつらさが強いと感じる場合:お住まいの自治体の精神保健福祉相談窓口など、公的な相談機関