はじめに
夜中に犬の鳴き声で目が覚めるようになったのは、うちの犬がシニアと呼ばれる年齢に差しかかってからのことだった。それまでは夜通し静かに眠っていた子だったので、最初のうちは何が起きているのか分からず、ただ戸惑うばかりだった。
この記事は、夜鳴きへの正しい対処法を示すものではない。私自身、当時はっきりとした答えを持っていたわけではなく、試してみたことと、あえて試さなかったことの両方がある。同じように夜中に鳴き声で目を覚ましている人に向けて、私が実際に何を感じ、何をして、何をしなかったかを、順番に書き残しておきたいと思う。
あのときのこと
気づいたきっかけ
最初の夜鳴きは、本当に唐突だった。深夜、それまで聞いたことのない調子の鳴き声で目が覚めた。様子を見に行くと、うちの犬は特にどこかを痛がっている素振りもなく、ただ落ち着かない様子でうろうろしていた。その夜は結局、そばに座って背中をさすっているうちに、いつの間にか鳴き止んで眠りについた。
一度きりのことならそれほど気にしなかったと思う。ただ、それから数日おきに、同じようなことが繰り返されるようになった。決まった時間というわけではなく、夜中の遅い時間だったり、明け方近くだったりと、そのときどきで違っていた。昼間は普段どおり過ごしているように見えるのに、夜になると急に落ち着かなくなる。そのちぐはぐさに、私はどう受け止めていいのか分からなかった。
そのときの気持ち・迷い
正直に言うと、最初の数週間は寝不足が続いた。鳴き声で目が覚め、様子を見に行き、落ち着くまでそばにいて、また眠りにつく。それを何度か繰り返すうちに朝になっている、という夜も少なくなかった。仕事がある日の翌朝は、頭がうまく働かないまま一日を過ごすこともあった。
それと同時に、近所への気兼ねもあった。うちは静かな時間帯に鳴き声が響きやすい環境だったので、隣近所に迷惑をかけていないかと気になって仕方がなかった。実際に苦情を受けたわけではなかったけれど、鳴き声が続くたびに、申し訳ないような、落ち着かない気持ちになった。うちの犬自身も、何かに戸惑っているように見えることがあり、それを見ているこちらまで落ち着かなくなる、という夜が続いた。
私が考えたこと、迷ったこと
夜鳴きが続く中で、私はいくつかのことを試してみた。一つは、そばにいる時間を単純に増やすことだった。夜、寝る前にできるだけ長く隣に座って過ごすようにしたり、夜中に鳴き始めたらすぐに様子を見に行くようにしたりした。うちの犬にとって、誰かがそばにいるという安心感が、何かしらの助けになっているように感じられる瞬間はあった。
もう一つ試したのは、寝る場所の調整だった。それまで少し離れた場所で寝かせていたのを、私の寝室に近い場所に移してみた。物理的な距離が近くなったことで、夜中に不安になったときにすぐ気配を感じられるようになったのか、鳴く頻度がいくらか落ち着いたように感じた時期もあった。ただ、それがどこまで効果としてあったのか、はっきりとは分からない。
生活リズムの工夫としては、日中の散歩の時間帯や長さを見直したりもした。日中にしっかり体を動かしておけば夜はぐっすり眠れるのではないか、という考えからだったが、これも思ったほど分かりやすい変化にはつながらなかったように思う。それでも、何もしないよりはいいだろうと考えて、しばらく続けていた。
一方で、試さなかったこともある。薬やサプリメントの類いを、獣医師に相談しないまま自分の判断で使うことはしなかった。夜、眠れない日が続くと、何か手っ取り早い方法はないかと考えたくなる瞬間は正直あった。ただ、うちの犬の体に直接影響するようなものを、素人判断で試すのは怖いという気持ちのほうが強かった。結局、そういうものに手を出す前に、まず動物病院で相談することを優先した。
今の私なら: 夜鳴きが始まってすぐの段階で、一度きちんと動物病院に相談すると思う。当時は「様子を見ればそのうち落ち着くかもしれない」と考えて、相談するまでに時間がかかってしまった。
動物病院では、加齢にともなう変化の一つとして説明されることがある、という話を聞いた。はっきりとした診断名を告げられたわけではなく、あくまで年齢を重ねる中で起こりうる変化の一つ、という程度の説明だった。それを聞いて、何か特別に悪いことが起きているわけではないのかもしれないと、少し気持ちが軽くなったことを覚えている。
今、振り返って思うこと
振り返ってみると、当時の自分がやっていたことは、正解を探すというより、うちの犬が少しでも落ち着けそうな方法を手探りで試していただけだったように思う。そばにいる時間を増やしたことも、寝る場所を変えたことも、それで完全に夜鳴きがなくなったわけではなかった。それでも、うちの犬には合っていたように思う部分はいくつかあった。
同時に、寝不足の日々の中で、自分の余裕がなくなっていく感覚もあった。うちの犬のことを大切に思う気持ちと、単純に眠りたいという気持ちが、同じ自分の中でせめぎ合っていた時期もあったと思う。そのことを後ろめたく感じることもあったが、今振り返れば、それもまた無理のないことだったのだろうと思う。
もし今、同じ状況にいる人がいたら
もし今、夜中の鳴き声で眠れない日々を過ごしている人がいたら、まず伝えたいのは、それで自分を責めなくていい、ということだ。何か特別なことをしてあげられていないのではないかと感じる夜があっても、それは決してその人が至らないからではないと思う。
試すことができる工夫は、人によって、そしてその子によって違うのではないかと思う。そばにいる時間を増やすこと、寝る場所を見直すこと、生活リズムを少し調整してみること。うちの場合はそうした生活レベルの工夫を試したが、合う合わないは子によって違うだろうし、これが唯一の方法だとは思わない。
薬やサプリメントのようなものについては、自己判断で試すのではなく、まず獣医師に相談することを私は選んだ。介護用品や生活を整えるための道具の中には、夜間の様子を見守りやすくするものなど、今はいろいろな選択肢があるようだ。ただ、それを使うかどうかも含めて、まずは獣医師に相談しながら、その子に合った方法を一緒に考えていくのがいいのではないかと、今の私は思っている。
そして、一人で抱え込まないでほしいとも思う。家族がいるなら家族と交代しながら様子を見ることもできるだろうし、獣医師に相談することで、気持ちが少し軽くなることもあると思う。眠れない夜が続くと、それだけで気持ちの余裕がなくなっていく。だからこそ、自分一人で何とかしようとしすぎなくていいのではないかと、当時を思い出しながら感じている。
おわりに
夜鳴きが始まった頃の私は、戸惑いと寝不足の中で、手探りのまま日々を過ごしていた。今も、あの対応で良かったのかどうか、はっきりとした答えは持っていない。それでも、あの時間は、うちの犬とのやり取りの一つとして、今の私の中に残っている。
もしこの記事を読んでいるあなたが、今まさに同じような夜を過ごしているのだとしたら、無理のない範囲で、その子に合いそうな方法を少しずつ試してもらえたらと思う。
一人で抱え込まないために
ここに書いたのは、あくまで私自身の体験に基づく一つの記録であり、医学的な診断や治療法を示すものではありません。 もし当てはまるようであれば、無理をせずに、下記のような窓口にも相談してみてください。
- 動物の体調や医療的な疑問がある場合:かかりつけの獣医師、または地域の獣医師会
- 強い落ち込みや不眠が続く場合:公認心理師・臨床心理士などによる専門のカウンセリング機関
- 心身のつらさが強いと感じる場合:お住まいの自治体の精神保健福祉相談窓口など、公的な相談機関